英国製オーブンAGA/アーガ

キャスト・アイロン(鋳物)製でエナメル仕上げのオーブンAGA(アーガ)を持つことは、英国人にとっての憧れで、ステータス・シンボルでもあります。色も、赤、黒、グリーン、ブルーなど8色から選べて、見た目もとっても格好がよく、ファーム・スタイル(またはカントリー・スタイル)のキッチンには欠かせないオーブンです。

これで料理したロースト・ミートは、肉の外側から肉汁を閉じ込めて焼き上げるので本当においしく最高です。ただ、一旦火を止めて完全にさめてしまうと、次に使う時には温まるまで何時間もかかるので、年中つけっぱなしにしておかなければなりません。ただ、寒い冬場ならばストーブ代わりになりますし、AGAの姉妹品の Rayburn(レイバン)を使えば給湯もできるのでセントラルヒーティングのない家には重宝します。

しかし、残念ながら、私たち日本人などの作る日本食には、はっきり言って不向きで役に立ちそうもありません。また、実際のところ、私の英国人の友人でもAGAを活用しておいしい料理を楽しんでいるのはほんのわずかです。ほとんどの友人宅では、ただのキッチンの飾りになってしまっています。というのも、彼らのキッチンには、このAGAのほかに、電気式またはガス式のクッカーやオーブンが備え付けられており、主にそちらを使用しているのです。さらに言えば、彼らにとって格好のよいキッチン自体がインテリアの一部であり、それを汚さないためにAGAでは料理をしないのです。


さて、英国で「オーブンの伝説」ともなっているこのAGAの生みの親は、英国人ではなく、スウェーデン人のノーベル賞受賞物理学者グスターフ・ダーレン(Gustaf Dalen:1869 - 1937)博士です。彼はアセチレン・ガスを使った灯台やブイを製造する会社AGAの経営者でもありました。(暗くなると自動的に明るさが増す装置を内蔵したAGA社の灯台はパナマ運河に採用されました。)しかし、1912年、実験中の爆発により視力を失ってしまいます。そのため、いやでも家にいることを強いられることにより、彼の妻やメイドが、1日中料理に追い立てられている事実を発見したのです。そこで、「あらゆる料理ができて、しかも使いやすい料理ストーブ」を開発する決心をし、ついに、家まで暖めることのできるオーブンを1922年に完成させ、博士の家で数ヶ月間テストされた後、発売開始となりました。新しい世紀を迎えて、どんどん新しいテクノロジーが導入されているにもかかわらず、Agaの人気は衰える傾向はありません。


そのAgaの内部構造についてです。1920年代に発売されてから、多少の変更はあるものの基本設計に変更はありません。
1.保温カバー: これらの2つの保温カバーがAga の最大の特徴で、 閉めているときは触っても暖かく感じる程度の程度ですが、開けるとすぐに、そのホット・プレートは料理できるまで熱くなります。

2.ボイリング・プレート: このプレートは高温加熱なので、ほとんどの電気ケトル(英国は204Vなのであっという間にお湯が沸きます)よりも速くお湯を沸かします。しかも、 一度に標準サイズのソースパン3ケを置けるくらいの大きさです。

3.熱源: Agaが一旦作動温度に達したら、後は その温度を保つためにほんのわずかなエネルギーがあれば充分です。天然ガス、プロパンガス、電気、オイルから選択可能。

4.煮物用プレート: このプレートも一度に標準サイズのソースパン3ケを置ける大きさで、鉄板としても兼用できます。
5.ロースト・オーブン: このオーブンは13kg/28lb までの重量の鳥を入れられます。 またグリルとしても使える上、ベーキングならラックを使えば2倍の物を焼けます。

6.ベーキング・オーブン: 3または4オーブンAgaの特徴。すべてのAga オーブンと同様、鋳物でできた室内は熱をしっかりと保ちますから、料理の出来具合を見るのに開け閉めするのを躊躇する必要がありません。
シチュー用オーブン;、 より高熱のオーブンやホットプレートを同時に使いながら、この使用目的の多いオーブンを使えることが、料理を簡単にし素晴らしい味を引き出す Agaのキー・ポイントです。

7.ウォーミング・オーブン: すべての4オーブンAgaの特徴で、このオーブンは出来上がった料理を乾燥させることなく暖かく保つので、お客様をもてなすときには最適です。

8ウォーミング・プレート: すべての4オーブンに標準装備された多目的に使用できるとても重宝なプレートです。
(2007/06/01~03掲載分を再編集)